コラム
生活関連サービス業が行う顧客満足度調査
生活関連サービス業において、日々変化する多様な消費者ニーズに対応するためには顧客の声を集め、分析し、それにタイムリーに適応していくことが必要不可欠です。顧客は何を求めているのか、顧客の求めに応えられているのかといった視点から、顧客満足度調査という手法で顧客ニーズと評価を捉えることが可能です。
当コラムでは、複数の美容室を展開するA社が顧客に向けて行った電話調査の事例をご紹介します。また、企業成長と売上アップにつなげるため、顧客満足度調査をどのように行うべきか。重要なポイントを3つ、ご紹介します。
(1)業種特性からみた顧客満足度調査に取り組むメリット
(2)調査を通じて導き出したいものは何か
(1)実施した顧客満足度調査の概要
(2)得られた調査結果と取り組み内容
(1)より多様な顧客意見を得る
(2)課題を明確にする
(3)データを読み解き、スタッフに浸透させる
1.生活関連サービス業が顧客満足度調査を行う必要性
(1)業種特性からみた顧客満足度調査に取り組むメリット
生活関連サービス業とは総務省の日本標準産業分類(平成25年10月改定)(平成26年4月1日施行)によりますと、洗濯業・理容業・美容業・浴場業・旅行業・冠婚葬祭業などを含む分類になります。これらの業種においては、消費者のニーズが日々大きく変化し、売上にも大きく影響を与えやすいことがコロナ禍のなかで読み取れます。
日々変化する多様な消費者ニーズに対応するためには、顧客の声を収集し、それにタイムリーに適応していくことが必要不可欠です。顧客満足度調査を行うことにより、一時的な満足度の計測ではなく、リピート率や離脱要因、競合他社と比較した際にどのような長所・短所が存在しているのかをはっきりとデータとして収集し、分析することができるようになります。そのことにより正確に顧客が求めていることを認識し、具体的に次のステップに進むための戦略を立てることが可能となるでしょう。
また、サービス業は提供されるサービス自体に対する評価だけではなく、サービス提供者であるスタッフの対応に大きく顧客満足度が左右されるといわれます。サービスを提供するスタッフが、実際の顧客にどう接客対応を評価されているのかを早期につかみ、修正を重ねていくことにより、リスクを軽減し、売上の維持・向上へとつながっていきます。いかに顧客満足度の計測をし続けているかはその後の企業としての成長力に直結するポイントとなります。
(2)調査を通じて導き出したいものは何か
顧客が求めているサービス、企業が強みとしたいサービスをそれぞれ円で示したときに、必要なことはその共通部分をいかに広げていくかとなります。ただし、注視すべきはその共通部分ばかりではなく、重なっていない2つの領域にあるもの(顧客が望んでいるが企業が応えられていないもの・企業が強みとしたいが顧客のニーズに一致していないもの)へ企業としてどう向き合い、新しい強みとして活かしていくかでもあります。しかし、この重なっていない領域は普段の営業の中ではなかなか見えてこないことが多いのが実情です。そこを掘り起こしていく作業が顧客満足度調査となります。
調査を行い、集計・分析していけば必ず求めたい結果が得られるわけではなく、上記のどの領域に対してアプローチを強めるか決めておくことが重要です。全体を見ることだけでは予定調和的な答えしか導き出せない場合も少なくないからです。仮説を立て、そこを深堀した先に、その仮説検証から将来への戦略が導き出されます。
2.電話調査による顧客満足度調査を行った美容業A社の事例
(1)実施した顧客満足度調査の概要
複数の美容室を展開するA社では売上向上に向けて、お客様へ電話による顧客満足度調査を実施しました。近隣には低価格の理髪店や、A社とコンセプトが似通った美容室の出店もあり、独自のサービス性に欠ける現状に対して解決の道筋を調査から得ることにしました。店舗来店頻度、店舗評価、近隣の他店舗に対する印象、リピートにつながる要素(複数回答)、リピートをしなくなる場合の最大要因(単一回答)、求めているサービス、カウンセリングや施術時の満足度について、顧客リストを元に電話調査によるアンケートを実施しました。
最初に立てた仮説としては、今後の集客力アップのためには施術以外のサービス性(待っている間のドリンクサーバーによる飲み物提供や無料Wi-Fiの設置など)を向上させ、付加価値を増やすことで競合店に負けない魅力を提示することが必要であるとしていました。
(2)得られた調査結果と取り組み内容
顧客満足度調査の結果として、熟練したスタッフが複数いることの認知率は高く、また長年の運営から中高年を中心に概ね満足度が高いことが分かりました。それに対して20代以下の年齢層では自店舗評価は分散し、金額の安さや新しさなどで他店舗へ流れる可能性も十分考えられる結果が出ました。また、新規サービスとしては無料Wi-Fiの設置に対しての要望は高いものの、その他のサービスへは「どちらでもいい」という回答が多く、リピートする要因としては「施術で顧客の望む仕上がりになっていること」、「仕上がり確認を丁寧に行うこと」、リピートからの離脱要因としては「施術やカウンセリングが顧客の要望を丁寧にくみ取っていないこと」、若者を中心に「他店舗の方が安いこと」などが挙げられました。
上記の顧客満足度調査に対応した取り組みとして、カウンセリングの精度を上げるためにネット予約時に仕上がりへの要望内容を入力してもらうように、また前回の仕上がり時の髪型データと照らし合わせてカウンセリングを行うように変更。更に、施術後の仕上がり確認についてスタッフへの研修を継続的に実施するようにしました。他には退店時に次回来店クーポン(有効期限は来店月から2か月以内で設定)を配布し、クーポン使用条件として前回への仕上がり満足度をクーポンに5段階で記入しもらうようにしました。実施後、数か月で既存顧客の来店頻度が上がり、仕上がり満足度もデータとして目に見えるかたちで向上していきました。
このように、顧客満足度調査はどのような情報を自店として集めるべきか明確化することにつながり、企業戦略も具体的に推し進めることが可能になりました。今回の調査による業績向上への寄与は非常に大きなものといえるでしょう。
3.顧客満足度調査を業績向上へつなげる3つのポイント
調査から得たデータをもとに企業成長と売上アップへつなげるためには、3つの重要なポイントがあると考えられます。
(1)より多くの顧客意見を得る
アンケートを実施する場合、顧客全体の数パーセントといった程度しか情報収集することができないこともあります。元々の母数がそこまで多くない場合、サンプル数が少数となり、データをそのまま鵜呑みにすることもできないため、なるべく多くの顧客の声を集められるように仕組みを工夫する必要があります。
その一例としては、来店時、メール、ハガキ、電話などで事前に調査の実施に対して周知を図り、理解を極力得ること、また、その際に業種にもよりますが協力いただいた方へ割引率の高いクーポン、もしくは無料券などの配布を伝えることなどが挙げられます。ただし、調査の説明や謝礼の配布で不備があると、逆効果となることもありますので注意が必要です。
(2)課題を明確にする
「なんとなく良かった」というようなフィードバックではなく、明確に判断可能な結果を導き出せる調査でなければなりません。良かった悪かったという感想に終始してしまうデータでは何が本当の課題なのかを見つけられず、改善に取り組む足がかりとはならないでしょう。
重要なのは、顧客の生の声を通じて、必要なデータを着実に収集することです。そのためには課題が何なのかを現場レベル・経営レベルからまとめあげ、明確にしなければなりません。また、それを改善するためにどういったことが必要なのか。その仮説に対して、調査を通じて検証していくことで情報がより有益なものへと変化していきます。
(3)データを読み解き、スタッフに浸透させる
顧客満足度調査を行ってもうまくいかない企業の多くは、経営陣が情報を集めるだけの現状把握で終わってしまっています。しかし、顧客満足度調査は今後の改善への糸口でもあることを忘れてはいけません。データを集めることはゴールではなく、そこが一つのスタート地点です。調査により顧客の声を集め、その分析により立てられた戦略を全スタッフが共有し、実行に移すことのできる組織であれば、企業としての成長は着実に続いていくでしょう。
そういった新陳代謝を促進するきっかけとして、ぜひ顧客満足度調査の実施を検討されてみてはいかがでしょうか。
アダムスコミュニケーションでは、お客様のご要望に応じた各種調査メニューをご用意しています。詳細は調査メニューでご確認ください。