コラム
電話調査の未来~AIオペレーターは人間を超えられるか~
電話調査では、一見大きな差が生まれないように見える導入のあいさつと質問の読み上げだけで、優秀なオペレーターとそうでないオペレーターの間に大きな成果差が生まれます。今注目されるのが、AIオペレーターではどれだけの成果を挙げられるかという点です。本コラムでは、電話調査におけるスキル(技術)とAI導入の未来について考察します。
1.電話調査における協力率の真実
電話調査は、さまざまな分野で重要なデータ収集手段として活用されています。企業の市場調査や世論調査など、対象者の生の声を得ることは、調査結果を活用した意思決定に大きく影響するため、回収率をいかに高めるかは常に課題となってきました。
電話調査においては、オペレーターのスキル次第で回収率が大きく変わります。最近では、このオペレーターのスキルをAIで再現できないかという議論もあり、電話調査の世界に新たな可能性が開かれようとしています。
電話調査の最初の難関は、対象者に調査に協力してもらうことです。もし電話がつながったとしても、相手が忙しかったり不安を抱いていたりすれば、すぐに断られてしまいます。アンケートやインタビューへの協力は、多くの人にとって時間を奪われる行為であり、興味がなければ敬遠されがちです。
それでも、優秀なオペレーターは高い協力率を誇ります。同じスクリプト(原稿)を読み上げる場合でも、言葉の抑揚や間の取り方、相手の気持ちに寄り添う話し方など、細部にわたるコミュニケーションスキルが大きな違いを生みます。一例として、優秀なオペレーターとそうでないオペレーターとでは、協力率に数倍の差が生じるという結果もあります。これは企業や組織が電話調査を行ううえで、見逃せないほどに大きな数字です。
2.人間のオペレーターが持つ高度なスキル
優秀なオペレーターが持つ能力は、人柄の良さや声の質だけではありません。たとえば、ルール通りに定められた質問を行う場合でも、相手の回答する速さなどを察知して、相手のペースに合わせることが重要です。こうした気配りによって、対象者が、質問に答えることの意義や協力するメリットを納得したうえで協力してくれるのです。
電話調査は時として長引くこともあります。相手が「そろそろ切りたい」と思い始めるタイミングを見極めて、できるだけ完了票へと持っていくように会話をスムーズに進行させることも重要です。優秀なオペレーターは、質問のペースを巧みにコントロールしながら、相手の興味を途切れさせず最後まで調査を完了させます。こうしたスキルは、経験と観察力、そして瞬時の判断力が組み合わさって初めて発揮されるものです。
では、こうした人間の高度なコミュニケーション力をAIでどこまで再現できるのでしょうか。AIオペレーターは、あらかじめ組み込んだスクリプト通りに話すことは非常に得意ですが、問題は臨機応変な対応と相手の気持ちを読む力をどう実装するかという点です。人間のオペレーターが経験のなかで培ってきたノウハウ、たとえば、声のトーンから相手の心情を察することや、微妙な沈黙に隠れた気持ちの変化などをくみ取る能力を、AIにどこまで実装できるのでしょうか。現状では、その部分は不明確であり、すべてを数値化・標準化するのは難しいとされています。
3.変わりゆく電話調査の未来像
それでも近年は、生成AIの飛躍的な進歩によって、経験豊富な人間のオペレーターの会話を分析し、その要点やパターンを抽出する取り組みが注目されています。人間が意識せずに使っている微妙な言い回しや間の取り方をモデル化し、AIに反映させることで、単にスクリプトを読ませるだけとは一線を画す、柔軟な対応が可能なAIオペレーターが実現する可能性が出てきました。
もちろん課題も多く、例えば調査対象者は、オペレーターが人間ではないと認識したら、一気に協力意欲が下がる可能性もありますが、ノウハウの可視化が進めば、優秀なオペレーターのスキルをAIオペレーターが再現できる時代が訪れるかもしれません。人間の温かみや共感力を補完する形でAIが調査業務で活躍する未来は、企業や研究機関にとっても魅力的な選択肢となるでしょう。
今後、AIオペレーターが人間を完全に超えられるかどうかはまだわかりません。しかし、電話調査の現場を支えてきた熟練オペレーターのスキルをデータ化して活用することは、多くの可能性を秘めています。協力率の向上に苦戦する担当者や、オペレーターの教育に悩む企業にとって、生成AIによるノウハウ分析の進化は、大きな期待を寄せられる一歩だといえるでしょう。
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