コラム
電話調査におけるAIオペレーターの活用
近年、人工知能(AI)の音声認識や自然言語処理技術が飛躍的に進歩しており、電話調査の現場でも「AIオペレーター」の導入について議論が進んでいます。従来は人間のオペレーターが担ってきた調査対象者への電話発信、調査内容の説明、質問の実施、回答の記録などの一連の電話調査プロセスをAIがどこまで代替・支援できるのか、コスト削減や効率向上といった大きなメリットが期待される一方、品質や信頼性、個人情報の取り扱いなどにまつわるデメリットや課題も少なくありません。
1.AIオペレーターの現状と背景
電話調査は、マーケティングリサーチや世論調査、顧客満足度調査など、あらゆる分野で長年にわたり活用されてきました。しかし近年、少子高齢化や労働力不足、さらにはコロナ禍によるリモートワークの普及など、多くの要因が重なって「電話オペレーター業務」を担う人材不足が顕在化しています。また、人件費の上昇も無視できず、大規模な電話調査を実施するコストは年々高くなる傾向にあります。
一方、AI技術の進展は目覚ましく、以前は難しいと考えられていた自然言語処理や音声合成、音声感情解析などが次々と実用レベルに近づきつつあります。こうした背景から、企業や調査会社が「AIオペレーター」を導入し、電話調査の工程を自動化もしくは半自動化することで、コスト削減と効率化を図ることは十分考えられます。
2.AIオペレーター導入のメリット
AIオペレーター導入のメリットとして、AIは調査対象者の生活リズムに合わせて柔軟にコール時間を設定できる点が利点です。さらに、複数のAIオペレーターを同時に稼働させれば、大量の電話発信や着信を短期間で処理できるため、回答が得られやすい時間帯に大量のコールを実施できるメリットを生かして、従来よりも迅速にサンプル数を確保できます。
また、技術がより進歩してAIオペレーターが人間のオペレーターと遜色ない調査ができるようになれば、人間オペレーターとの分業により、人件費の適正化が可能になります。人間のオペレーターは、疲労や集中力の低下、感情の変動などによって対応にばらつきが出る場合があります。しかし、AIオペレーターはあらかじめ決められた台本やシナリオに沿って調査ができるので、質問の順序や言葉遣いが一定で、ヒューマンエラーを減らすことが可能です。回答者とのやり取りをすべてログとして残せる点もデータ分析上は有利といえます。
自然言語処理の高度化により、AIが回答内容をリアルタイムでテキスト化し、同時に分類・解析できるシステムの構築も期待できます。これにより、調査実施中に得られるデータを随時確認し、定性的な調査であれば必要に応じて自動的に回答を深堀するといった柔軟な対応が可能となるでしょう。また、調査の途中で回答に食い違いが出た場合にアラートを出したり、回答を自動でコードに割り振ったり、住所に郵便番号を検索して付与したり、漢字表記にするなどの効率化も十分考えられます。
3.調査品質を保つための課題
電話調査の品質は、「どれだけ正確で、高い回収率でデータが得られるか」に大きく左右されます。この点において、AIオペレーター導入による品質管理については、以下のような点に留意することが必要です。
まず、AIが発信する電話に対して、回答者がどのような印象を抱くかは未知数の部分があります。音声合成がいくら自然になったとしても、機械的な応対に不信感を持つ人も一定数存在すると考えられます。その結果、電話を途中で切られたり、回答が敬遠されたりする可能性があり、回収率が下がるケースも考えられます。
人間のオペレーターは、回答者の声のトーンや言葉の選び方から微妙なニュアンスをくみ取り、必要に応じて質問を言い換えたり補足説明を行ったりできます。こうした柔軟性がAIにどこまで再現できるかは現状課題が多く、場合によっては回答者が質問をよく理解しないまま回答してしまうリスクもあります。
このように、AIオペレーター導入にあたり、人間のもつ繊細なコミュニケーション能力にAIがどこまでキャッチアップできるか、という点は大きな課題です。次のコラムでは具体的な導入を想定して詳しく考えていきます。
アダムスコミュニケーションでは、お客様のご要望に応じた各種調査メニューをご用意しています。詳細は調査メニューでご確認ください。